(基本的に) 長期滞在者のみ「海外で銀行口座を開設」できる
快適に海外生活を送る上ではもはや必須と言うべき「モバイル支払い」。中国だと決済アプリの Alipay (支付宝) や WeChat Pay (微信支付) が必要で、そのためには中国の銀行口座が欠かせません (※日本のクレジットカードを紐づける方法等もあり)。では、中国において、外国人はどうすれば銀行口座を開けるのでしょうか?
マネーロンダリング防止のため、全世界で銀行口座の開設がどんどん難しくなっていますが、中国も例外ではなく、銀行口座ゲットまでの道のりは平坦ではありません。今回の記事は、中国での銀行口座の開き方についてご紹介します。
そもそも外国人も銀行口座を開設できる? その条件とは?
以前は (中国に限らず全世界で) 規制が緩かったので非居住者でも銀行口座を開設することができましたが、2016年を境にその規制が強化され、今では長期滞在者以外の外国人が、中国で銀行口座を開くことは非常に難しくなっています。
ゲンサイヤー、そして留学や赴任等で中国に長期滞在する人は「居留許可証」の取得が必要ですが、その居留許可証がないと、実質、外国人の銀行口座開設は認められていません。
ただ、法律で厳密に定められているわけではなく、大手以外の小規模の銀行に行けば (担当者によって!!) 開設することができるかもしれません。こればっかりは実際にやってみないとわかりません。
逆に居留許可証があっても、フルタイムで働いていない人 (例:駐在員の妻等) は、(特に四大銀行等の大手銀行で) 口座開設を断られることもあります。明確な理由は不明ですが、何かと規制が厳しくなっているんでしょうね。
実際に支店に向かい、銀行口座を開きましょう
では中国国内にて、実際に外国人が銀行口座を開設する際の手順を以下で見ていきましょう。
1) 支店を訪問
来たてホヤホヤのゲンサイヤーは、英語か日本語可能な行員がいる場合もあるので、できるだけ外国人がよく集まる市内中心部での開設をオススメします。
2) 順番待ちの札を受け取る
日本の銀行と同じように、順番待ちの紙札を受け取りましょう。手続内容によって受付窓口が異なるので、近くのスタッフに一言聞いた方が安心です。
3) 窓口で手続き開始
後で詳しくお伝えしますが、申込書、パスポート、その他必要書類を提出します。ひとつでも書類に不備や欠陥があれば全く受けつけてもらえませんのでご注意を。
4) 暗証番号の設定
日本は4桁の場合が大半ですが、中国のパスワードはどこも6桁。誕生日とかだったらすぐに他人にバレてしますので、気をつけましょうね。
5) 手持ちのお金を入金
最初は10元でも100元でも良いので、手持ちの現金を渡しましょう。銀行によってはマルチカレンシーの口座を持てるので、その場合は外国紙幣の対応もしてくれるはず。ちなみに、銀行口座開設自体には費用はかかりません。
6) 銀行カード受取
ATMで使用するためのカード (ほぼ100%銀聯ブランド) を受け取ります。VISAやMaster等のクレジットカードが必要な場合は別途申請が必要ですが、ハードルは超高いです。昔は「トークン (振込時などに使用)」もその場で受け取りましたが、今はアプリがあるのでもうお役御免ですね。
7) アプリ登録
できれば銀行のアプリをあらかじめインストールしておき、その場で行員に手伝ってもらってモバイル支払いの設定なども済ませられればベター。親切な行員だと、アプリ上で何ができるかの説明もしてくれるでしょう。
以上が銀行口座開設のオーソドックスな手順です。ただ、口座開設も最近はどんどん規制が厳しくなっているようで、場合によっては勤務先の財務関係者と同行しないと開設できない、といったケースもあるようです (詳細はこちら参照)。なにかと面倒な世の中になったものです。。
中国で銀行口座を開く際に必要な書類
かつてはパスポートさえあれば簡単に口座を開設することができたらしいですが、今はそんな簡単にいくはずもなく、、だいたい以下の書類が必要です。
※銀行によって条件がかなり異なるので、詳細は各自でご確認ください
口座開設の際、絶対に必要な書類
- パスポート
- 居留許可証
- 臨時宿泊証明書(境外人员临时住宿登记表) → 詳細はこちら参照
- 就業許可証 or 在学証明書
場合によって提出を求められる書類
- 在籍証明書の原本 (勤務先で入手)
- 勤務先の銀行口座開設証明書 (勤務先で入手)
- 営業証明書 (勤務先で入手)
- 中国の電話番号 (本人登録のものである必要あり)
- マイナンバー (日本のやつです)
- 帯同妻の場合は、戸籍謄本等の夫婦関係を証明できるもの
各書類を準備する際の最大のネックは「居留許可証」「就業許可証」だと言われています。入国後すぐに申請をしても、手続きに1〜2か月ほど要する場合もあるのだとか。。こればっかりは運次第です。
ゲンサイヤー自身は勤務先からの給与振込のため、会社指定の銀行口座を開くことになることが大半だと思います。その場合は特に大きな問題はないでしょう。が、帯同してきた奥さまの口座を開設するようなケースですと、ハードルが一段上がってしまうので、それなりの覚悟が必要かもしれません。
なお、学生の方は「X1ビザ」だとすんなり口座開設ができるようですが、「X2」の人は断られることがよくあるそうです。が、ネット情報によると「中国工商銀行」あたりはX2ビザでも受け付けてもらえる可能性があるとか。
では、どこの銀行で口座開設すればいい?
まず、「工中建农 (工中建農)」と呼ばれ、中国四大銀行である中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行は、一般的に口座開設のハードルが高いと言われています。
それこそ、先程ご紹介した記事内に書かれているように、勤務先の財務関係者の帯同が必要だったり、求められる書類が多岐に渡る、ということが十分に考えられます。
結局はどの銀行も自ら出向いてトライしないと口座開設が可能かわからないので、ひとまずは「どの銀行で口座を開きたいのか」「なぜその銀行でないとダメなのか」を事前によく調べてから口座開設に挑みましょう。以下ではわたしの経験も含め、いくつかオススメの銀行についてご紹介します。
上海日本人学校の学費振込に必須な「中国銀行」
中国屈指のメガバンクで四大銀行の一角を占める「中国銀行」。国内はもちろん、海外でも支店を見かけることが多々あり、総資産は世界トップ5にランクインしたこともあるほどのメガバンク。日本でもサービスを展開しています。
もし上海で子持ちの方は、日本人学校の学費振り込みが「中国銀行指定」となるので、口座開設が必須です。わたしも口座を持っていますが、オンラインバンキングでは英語が使えるし、支店によっては日本語のできるスタッフもいたりするので、新ゲンサイヤーにも優しい銀行と言えますね。
外国人に優しく、口座開設も容易な「平安銀行」「浦发銀行」
四大銀行と比べると扱いは劣るものの、中国国内どこにでも見つけられて規模的に全くの問題のない「平安銀行」もオススメ。深圳をベースとし、四大保険会社「中国平安保険」を親会社とする平安銀行は、コロナ明けの2022年に「帯同妻でも無事に口座開設できた」という人がいたので、口座開設のハードルは低いでしょう。
あと、1992年に設立された比較的新しい「浦发銀行 (上海浦東発展銀行)」も口座開設が比較的容易だと言われています。かつてはJAL共同でクレジットカードを発行していたので、外国人への許容度が比較的高い銀行なのでしょう。
わたし自身も近頃、新規で口座を開設したばかりです。口座開設時に「なぜ口座が必要なのか?」と質問されましたが、「定期預金用に別の銀行で口座が欲しくなった」と伝えたところ、その後は特に何も聞かれませんでした。友人の一人もこの銀行によく世話になっているらしく、サービスは抜群だと。
富裕層向けで英語サービスもある「HSBC 汇丰银行」
もし中国国内である程度の規模 (50万元以上) の資産を築く予定の方は、HSBCで口座開設することも検討しましょう。ロンドンと香港に本社を構えるスーパーメガバンクなので、行員はみんな英語が堪能です。
HSBCでは口座内に一定以上の預金額がないと、「口座維持手数料」がチャージされてしまいます。つまり、この口座維持手数料が免除される水準の預金 (50万元が基準) をする予定の、富裕層ゲンサイヤー向けの銀行、と言えるでしょう。
預金額50万元 (約1000万円) を超えるとHSBCプレミア口座を無料で維持できて、世界各地にある各国のHSBCの現地口座を容易に開くこともできます。例えば、上海ベースの人が、香港やマレーシアにある現地銀行口座を持つ、ということが簡単にできてしまうのです。
日本国内のみならず「全世界で分散投資をしたい」と考える人にとって、HSBCはベストチョイスのひとつです。周りの金持ちの友人がこの口座について詳しいので、HSBCについては、彼への取材を行った後にでも詳しくご紹介したいと思います。
他の外資は? 日系や韓国系の銀行は?
アメリカ系の銀行だと、中国で“花旗銀行”として知られる「Citibank」が幅を利かせています。北京、成都、杭州など国内12都市に展開していて、上海市内にもいくつか支店があります。けども、HSBCに比べると支店は少ないし、元気もないように見受けられますね。実際に周りでCitiを使っている人も知りません。。
日系だと三菱UFJや三井住友銀行など、メガバンク〜地銀まで数多くの銀行が中国に進出していますが、例えば みずほ (中国) のサイト を見てもわかるように、中国では日系の銀行は「中国人個人向け人民元業務」は行っておらず、個人口座は取り扱っていません。
対して、韓国系の「友利銀行 (Woori Bank)」 は2007年に開業後、2024年時点で国内10都市以上で展開中。もちろん、個人向けの口座取り扱いも行っています。異国でも母国の銀行サービスが利用できてしまう韓国人が羨ましい…!
その他にはシンガポール系の銀行「DBS銀行」も中国で営業を行っていますね。DBSは2005年から個人資産運用サービスを開始し、ネットバンキングも提供中。日系の銀行も頑張れ!
まとめ
現代の中国においては、モバイル支払いができるできないで生活の快適度が断然変わってきます。必要書類の準備に時間と手間がかかりますが、なんとか早く銀行口座開設にたどり着けるよう、色んなことに耐えて頑張ってください。
中国以外の他国ですと、ベトナムも長期ビザ保有者しか銀行口座を開くことさえできません。しかし、カンボジアは非居住者でも容易に銀行口座を開くことが可能です (!!)。カンボジアとベトナムの銀行事情に関しては、また別記事で紹介することにしますね。
とにかく、海外で銀行口座を作れるうちに作っておけば、今後その国を離れることになっても口座自体はキープできますし、資産の国際的な分散にも役立ちますので、あなたも Good luck!!